遺言

遺言

1、遺言書がある場合

(1) 遺言書があるか?

遺産分割協議の後になって遺言書が見つかると、分割合意は原則として無効になってしまいます。まずは、遺言書の有無を確認することが大切です。

公正証書遺言の場合は、公証役場に原本が保管されています(通常は20年。しかし、20年経過後も保存されているのが通常)。

公証役場に、遺言者の死亡を証する資料、相続人であることを証する資料、本人確認できる資料を提出して、遺言書の有無を調査することができます。

(2) 協議による分割

遺言がない場合に行うのが通常ですが、遺言があっても相続分の指定のみをしている場合、遺言で洩れている財産がある場合、遺言の方式を欠いたり遺言者の遺言能力に問題があって遺言が無効である場合にも協議による分割を行います。

また、遺言があっても、相続人全員の同意があれば、一定範囲で遺言とは異なる遺産分割協議をすることは可能です。

(3) 「自筆証書遺言」とは?

自筆証書遺言とは、遺言者が、遺言の全文、日付、氏名を自書し、押印して作成されたものです。

自筆証書遺言を見付けたり、預かっている場合には、遅滞なく家庭裁判所にその遺言書を添えて検認の申立てをしなければなりません(民法1004条)。

家庭裁判所は、相続人などの立会いのもと、遺言書を開封し、遺言書の内容を確認します。
検認手続を経ていない自筆証書遺言では、不動産の相続登記の手続を登記所が受け付けてくれません。

2、遺言でできること

(1) 遺言でできること1(身分に関する事項)

  1. 認知(781条2項)
    「○○は遺言者と▽▽の間の子供であるから認知する」
    →遺言執行者は戸籍法に従って、市町村長への届出を行わなければなりません(戸籍法64条)。
  2. 未成年後見人の指定(民839条)
    未成年者に対して最後に親権を行う者が、遺言で後見人を指定します。
    →後見人に就職した者は、10日以内に市町村長に遺言の謄本を添付して後見人届出書を提出しなければなりません(戸籍法81条)。
  3. 未成年後見監督人の指定(民848条)
    未成年後見人を指定できるものが、遺言で未成年後見監督人を指定するというものです(未成年後見人の指定とともに行います)。

(2) 遺言でできること2(相続に関する事項)

  1. 推定相続人の廃除・取消(民法892条~894条)
    →廃除の効力は、遺言執行者が家庭裁判所に廃除の請求をし、家裁から「廃除する」旨の審判を受けて、はじめて効力が生じます(遺言執行者の執行行為が不可欠です)。
  2. 相続分の指定(民法902条)
    法定相続分と異なる内容の相続分を遺言で指定できます。
    →この指定があった部分については、法定相続割合は適用されず、遺言で指定した割合の相続分により相続割合が決められます。
    →抽象的割合による指定(分数的割合をもって抽象的に指定する方法)(例:「相続人Aに4分の3を相続させる。」)と、特定財産による指定(例:「相続人Aに〇〇の土地を相続させる。」)とがあります。
  3. 相続分指定の委任(民法902条)
    第三者にその相続分の指定を委任することもできます。

(3) 遺言でできること3(相続に関する事項)

  1. 特別受益の持戻しの免除(民法903条3項)
    「遺贈・生前贈与したものを相続財産に組み入れなくても良い」旨の意思表示です。
  2. 遺産分割の方法の指定(民法908条)
    遺産を各相続人にどのような形で分割取得させるかの方法の指定です。

◆特定の遺産を特定の相続人に「相続させる」旨の遺言
特定の遺産を特定の相続人に「相続させる」旨の文言があった場合、判例によれば、遺言書の記載から、明らかに遺贈あるいは遺贈と解すべき特段の事情が無い限り、「遺産分割の方法の指定」であり、しかも、その部分につては何らの行為を要せず直ちに相続により承継されるとされています(最高裁判決平成3年4月19日)。
→遺言執行者がいたとしても相続人が単独で所有権移転登記申請が可能です。

(4) 遺言でできること4(相続に関する事項)

  1. 遺産分割方法の指定の委託(民法908条)
    分割方法の指定を第三者に委託することもできます。
  2. 遺産分割の禁止(民法908条)
    遺言者は、遺言によって最長、死後5年間に限り、遺産の分割処分を禁止できます。
  3. 共同相続人の担保責任の減免・加重(民法914条)
    遺言者は、遺言によって、民法が定める担保責任の範囲を変更することができます。
  4. 遺贈の減殺の割合の定め(民法1034条)
    民法では、遺留分減殺請求によって減殺される遺贈について、「その目的の価格の割合に応じてこれを減殺」と定めていますが、この定めと異なる内容を遺言で定めることができます。

(5) 遺言でできること5(相続財産の処分に関する事項)

  1. 遺贈(民法964条)
    遺言者がその相続財産の全部又は一部を受遺者に無償で譲与することを文言とした遺言です。
    →権利移転の履行義務は、遺言者の相続人にあり、相続人が数人いる場合は、全相続人が履行責任を負います。相続人の対立によって履行が困難になる場合に備えて遺言執行者制度が設けられています(民法1012条・1013条)。
  2. 信託の設定(信託法3条)

3、遺言書作成を考えてみてよいケース

  1. 子どもがいないケース
    →配偶者の両親、兄弟姉妹に遺産がいってしまう
  2. 相続人が一人もいないケース
    →遺産は国庫に帰属することになってしまう
  3. 内縁の妻(または夫)がいるケース
    →相続の権利がないため、何もしないと遺産を遺せない
  4. 家業を継ぐ子どもがいるケース
    →家督相続ではないので、ほかの子と同じ相続分になってしまう
  5. 遺産を社会や福祉のために役立てたい
    →「子孫に美田を残さず」

無料相談(埼玉総合法律事務所)

print